【本レビュー】あぽやん 新野剛志

apoyan

タイトルからはどんな内容なのか想像がつかない「あぽやん」。何処となく柔らかい響きなのでですが、帯をみると「空港のトラブル解決はあぽやんにまかせろ!」とある。なんだかバタバタな展開が予想できるわけで、いわゆる仕事頑張って明日を生きていこうという爽快なストーリーなんだろうと手にとってみた次第。

実際、空港でのトラブルといえば、何が考えられるだろう? …残念ながら国内線ぐらいしか、しかも数えられる程度しか乗ったことがないので想像がつかない分野。でもそこはお仕事系の物語、トラブル発生から解決までの流れでひっかかることなく読める。こういったタイプは「下町ロケット」みたいな大きなところ相手に中小がすっぱ抜くみたいなものもいいんですが、こういった日常に近い部分でのひとりひとりに対応していくうちに仕事に対して目覚めていく流れも好きですね。

ちなみに「あぽやん」は旅客を無事に送り出すエキスパート。でも、エキスパート故に他に行き場のない職となってしまっている。そこに本社から飛ばされてしまった青年の成長記。仕事をしていく上での元気をもらえる作品になってます。

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空港での専門用語と内情と成長

自分の知らない分野を垣間見ていくときに、想像のつかない展開やトリビアといってもいいような専門用語を知ることが、刺激的というか雑学欲(そんな言葉があるのかわかりませんが)をくすぐると、グイっと引き込まれていったりします。「あぽやん」でもそういったものがあちこちで登場してきて、ちょっとニヤリとしてしまったりしました。

たとえば「YYのお客様」なんて表現。ワイワイということで、うるさいとかクレーマーとかいう意味合いで使うらしいです。ああ、なるほどと思いつつ、今度空港でそんな言葉が聞こえてきたりしないかなとか思ってみちゃったりします。

そんな専門用語がちりばめられつつ、空港でのトラブルに対する処置や内情などを物語をたのしみつつ知ることができるのは、お仕事系小説ならでは。そして主人公がだんだんと「あぽやん」としての自覚や誇りをもっていく成長部分は、読者にとってもいつの間にか明日への糧になりましたね。また、時間をおいてから読み直してみたい一冊です。

裏表紙から引用

遠藤慶太は29歳。大航ツーリスト本社から成田空港所に「飛ばされて」きた。返り咲きを誓う遠藤だったが――パスポートの不所持、予約消滅といった旅客のトラブル解決に奮闘するうちに空港勤務のエキスパート「あぽやん」へと成長してゆく。個性豊かな同僚たちと仕事への情熱を爽やかに描いた空港物語。

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